「簡易ドーピング検査協会」について調査してみた。JBBFが簡易ドーピング検査を委託。法人として登記されていない任意団体か?
JBBF(日本ボディビル・フィットネス連盟)に関連して、近年「簡易ドーピング検査」という言葉を目にする機会が増えています。
2023年度からJBBFが導入したこの簡易ドーピング検査は、WADAによる正式なドーピング検査に先立って実施される、いわゆるスクリーニング検査として位置づけられています。JADAによる公式検査と比較して費用が抑えられることから、多くの大会において、より幅広い選手を対象に実施されている点が特徴です。
簡易ドーピング検査は、JADAによるドーピング検査と比較して10倍以上の人数を対象に実施されていることが確認されています。詳しくは、以下の記事でデータをもとに調査・解説しています。
JBBFのドーピング検査はどう変わった?12年分データで見る検査数・陽性率・簡易検査
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2026-01-24
JBBFのアンチドーピング規程などの公開資料によると、この簡易ドーピング検査は簡易ドーピング検査協会という団体に委託されているようです。
しかしながら、この「簡易ドーピング検査協会」について、団体の実態や運営体制、検査方法などを示す十分な情報は、インターネット上では容易に確認できません。
本記事では、この簡易ドーピング検査協会について、公開情報および一次資料に基づき、事実確認を目的とした調査を行いました。
調査の結果、
簡易ドーピング検査協会の実態は極めて不透明であり、
外部から検証可能な情報が十分に示されていないことが明らかになりました。
そして、この点こそが、近年見られる簡易ドーピング検査に対する不信感や疑問の背景にあるのではないか、という結論に至りました。
簡易ドーピング検査協会についてインターネットからわかること
調査対象は、「簡易ドーピング検査協会(STd)」を名乗る団体です。
STdという略称は、おそらく Simple Test Doping の頭文字を取ったものと推測されます。
インターネット上で「簡易ドーピング検査協会」「STd」などのキーワードを用いて公開情報を調査しましたが、明確に「協会の公式サイト」と断定できるWebサイトは確認できませんでした。
現時点で確認できた公開資料は、次の 2点のみ です。
1. 簡易ドーピング検査協会が発行した検査結果報告書

- 出典: WADA 禁止薬物 スクリーニング検査結果報告.pdf - 神奈川県ボディビル・フィットネス連盟
- 本資料は、簡易ドーピング検査協会が発行したものとされる検査結果報告書です
- 書面内には、簡易ドーピング検査協会の所在地および連絡先とされる情報が記載されています
ただし、団体の概要、運営主体、検査体制などの詳細情報は、この書面からは確認できません。
2. 簡易ドーピング検査協会のものと思われるWebサイト(作成中)

- URL: https://simpletest-doping.com/
- WordPressが初期化された状態のままの「作成中」ページが表示されます
- ドメイン名が
simpletest-doping.comであることから、簡易ドーピング検査協会(STd)に関連するサイトである可能性は高いと考えられます
一方で、このサイト上には、
- 団体概要
- 運営主体
- 検査方法や体制
- 問い合わせ先の詳細
といった、協会の実態を把握するための情報は掲載されていません。
ドメイン情報の確認
上記Webサイトのドメイン simpletest-doping.com について、公開されているドメイン情報を調査しました。
ドメイン基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| ドメイン名 | simpletest-doping.com |
| 登録日 | 2024年4月12日 |
| 有効期限 | 2026年4月12日 |
| レジストラ | XServer, Inc. |
これらの情報から、次の点が読み取れます。
- ドメインの取得日は 2024年4月12日 であり、簡易ドーピング検査が実施されていたとされる 2023年度より後 です
- ドメイン取得から 1年以上が経過しているにもかかわらず、Webサイトは依然として「作成中」の状態に留まっています
この点からも、 団体の活動実態や情報発信体制を外部から把握することは困難である と言わざるを得ません。
法人格の有無について
まず、日本国内で法人として活動しているかどうかを確認するため、国税庁 法人番号公表サイト を用いて調査を行いました。
日本国内で法人格(株式会社、一般社団法人、一般財団法人、NPO法人など)を取得していれば、原則として同サイトの検索結果に該当情報が表示されるはずです。
その結果、株式会社・一般社団法人・一般財団法人・NPO法人のいずれの形態においても、「簡易ドーピング検査協会」または類似名称の法人は確認できませんでした。

調査結果
少なくとも日本国内においては、
法人として登記されていない任意団体、もしくは個人による活動である可能性が高い
と判断できます。
所在地として記載されている住所の検証
簡易ドーピング検査協会が発行したとされる検査報告書(WADA 禁止薬物 スクリーニング検査結果報告.pdf - 神奈川県ボディビル・フィットネス連盟)には、以下の所在地が記載されていました。
神奈川県藤沢市菖蒲沢125-1-308
この住所は、文脈上、簡易ドーピング検査協会の事務所、あるいは検査に関する拠点であることが想定されます。また、「308」という表記から、集合住宅の一室である可能性が高いと考えられます。
そこで、この住所について、地図情報および土地利用状況を調査しました。

その結果、
「菖蒲沢125」に該当する地番は畑地であり、建物は確認できませんでした。
このことから、記載されている住所は、正式な住居表示として成立していない可能性が高いと考えられます。
住所表記の再検討
一方で、「菖蒲沢1125」という地番には、3階建て以上の集合住宅が存在することが確認できました。

このため、
- 記載されている住所が誤っている
- もしくは、正確な所在地が特定されないよう、意図的に簡略化・改変されている
といった可能性が考えられます。
いずれにしても、第三者が所在地を正確に再現・確認できない状態であることは、団体の実態や運営体制を検証するうえで、大きな問題だと言えるでしょう。
公式なアンチ・ドーピング検査との関係
日本における公式なアンチ・ドーピング検査はJADA(日本アンチ・ドーピング機構)が管轄しており、国際的な基準や禁止物質リストはWADA(世界アンチ・ドーピング機構)によって定められています。
JADAおよびWADAによる認定検査機関一覧を確認した限りでは、「簡易ドーピング検査協会」が公式なアンチ・ドーピング検査機関として位置づけられている事実は確認できませんでした。
また、WADA認定ラボで実施される検査は、
- 高度な分析装置(例:質量分析装置など)
- 検体管理や品質保証に関する厳格な運用体制
を前提としています。
そのため、一般的な居住用物件でこれらの検査が実施されることは想定されていません。
この点からも、当該団体による検査が 公式なアンチ・ドーピング検査の枠組みに含まれるものではないと考えるのが自然でしょう。
「簡易ドーピング検査」という用語について
重要な点
- 「簡易ドーピング検査」 という制度は、JADAの規程や競技規則、法令上に定義されたものではありません
- 公的・公式な検査区分として確立された用語ではなく、独自に用いられている表現です
そのため、仮に何らかの簡易的なスクリーニング検査が行われていたとしても、それは 競技上のドーピング判定やJADA / WADA に基づく公式検査とは、制度上まったく別のものである点に注意が必要です。
名称に「ドーピング検査」という言葉が含まれていても、その検査が持つ位置づけや効力は、公式検査とは大きく異なる可能性があることを理解しておく必要があります。
調査結果のまとめ
今回の調査により、「簡易ドーピング検査協会」とされる団体について、以下の点が確認できました。
| 調査項目 | 確認結果 |
|---|---|
| 法人登記 | 登記なし(法人としての登録は確認できず、任意団体または個人による活動の可能性が高い) |
| 所在地 | 記載されている住所は、正式な住居表示として再現できない |
| JADA / WADA 認定 | 該当なし(公開されている認定検査機関・認定ラボ一覧に記載なし) |
| 「簡易ドーピング検査」の定義 | 公的に定義された制度や公式な検査区分は確認できない |
本記事は、特定の個人や団体を非難することを目的としたものではありません。あくまで、公開情報および一次情報に基づき、事実関係を整理することを目的とした調査です。
そのうえで、本調査を通じて浮かび上がった最大の問題は、「簡易ドーピング検査協会」の実態が極めて不透明であること、そして 「簡易ドーピング検査」と称される検査方法の具体的な内容が外部から確認できないこと でした。
法人格の有無、所在地の正確性、検査体制や責任の所在、さらには、どのような方法で、どの程度の精度を持つ検査が行われているのか。これらについて、第三者が検証可能な情報は十分に示されていません。
また、このような不透明な状況では、選手や関係者が検査内容や結果について問い合わせたり、質疑を行ったりする窓口が確認できないという点も、競技者保護の観点から看過できない問題だと感じました。
「ドーピング検査」という言葉は、競技の公正性や信頼性と強く結びつく表現です。そのため、名称や体裁だけが先行し、実態や制度上の位置づけが不明確なまま受け取られる状況には、より慎重な姿勢が求められるでしょう。
透明性向上のための提案
もし「簡易ドーピング検査協会」が、競技者や関係者からの信頼を得たいと考えるのであれば、少なくとも次のような情報を明示することが望ましいと考えます。
- 団体の法的な位置づけ(法人格の有無、運営主体)
- 正確な所在地および連絡先
- 検査の責任者や運営体制
- 「簡易ドーピング検査」とは何を指すのか、その検査方法の概要
- 検査の限界や、公式検査(JADA / WADA)との違いに関する明確な説明
- 検査結果に関する問い合わせや質疑を受け付ける窓口の明示
これらの情報が示されることで、当該検査が 「何を目的とし、どの範囲で利用できるものなのか」 を、競技者や第三者が適切に判断できるようになるはずです。
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